集団になると「力」が抜ける理由
ドイツの心理学者マクス・リンゲルマンは、興味深い実験を行った。
彼は人々に綱引きをさせ、人数が増えるにつれて一人あたりの力がどう変化するかを測定したのである[1]。

結果は予想以上にシンプルで残酷だった。
1人で綱を引いたときの力を100%とすると、2人になると93%、3人では85%、そして8人になると一人あたりの力は49%にまで低下する。
つまり、人が増えるほど「本気を出さなくなる」のだ。
この現象は「リンゲルマン効果」と呼ばれ、社会心理学では「社会的手抜き」として知られている。
「頑張っても報われない」と思う瞬間
人が多い環境では、自分の貢献が正しく評価されにくい。
チームで働いていても、「頑張っても気づかれない」「サボってもバレない」と感じた瞬間に、人は無意識のうちに力を抜いてしまう。
そして、いつしか「別にいいか」と思うようになる。
これは仕事でもプロジェクトでも同じだ。
人数が増えれば責任の所在はぼやけ、役割の境界も曖昧になる。
誰かがやってくれるだろう。
そう思った瞬間、チーム全体のパフォーマンスは下がる。
勝つ人は「自分の綱」を見ている
では、どうすればこの綱引きの法則に逆らえるのか。
それは「他人と同じ綱を引いているようで、自分は自分の綱を引いている」と意識することだ。
チームの成果を信じながらも、責任の感覚は常に自分の中に置いておく。
「自分がこの綱を引かなければ動かない」と思う人が増えれば、組織全体の力も自然と上がっていく。
集団の中でも本気を出せる人こそ、最終的に勝ち続ける人だ。
引用文献
[1] https://www.verywellmind.com/the-ringelmann-effect-2795907

