
ルー・ガースナーが示した「4つの人種」
IBMが経営危機に陥った1990年代初頭、同社を再建へ導いたルー・ガースナーは、その著書の中で興味深い指摘をしています。「企業変革において、人は4つのカテゴリーに分かれる」とし、それぞれを次のように示しました。
「変化を起こす人」
「変化に巻き込まれる人」
「見守る人」
「変化に気づきすらしない人」
この言葉は単なる分類ではなく、企業という生態系の中での“生存戦略”を語っているように思えます。変化のスピードが加速する現代において、自分がどの立ち位置にいるのかを見つめ直すことは、キャリアを考える上で避けて通れません[1]。
「変化を起こす人」はどんな人か
変化を起こす人は、必ずしもカリスマ的リーダーである必要はありません。組織の中で小さな問題に気づき、それを改善しようと行動に移す人も立派な“変化の担い手”です。彼らに共通するのは、「不満を言う前に、まず自分で動く」という姿勢です。
一方で、「変化に巻き込まれる人」は、周囲の動きに反応して動くタイプです。言われたことはやるけれど、自分から仕掛けることはない。その結果、変化の波に押し流されてしまうことも少なくありません。
「見守る人」は、一歩引いて状況を観察するタイプ。時に冷静で客観的ですが、傍観に終始してしまうと、組織の勢いを削ぐ存在になってしまう危険もあります。
そして最後の「変化に気づきすらしない人」は、最も危うい立場です。市場や組織の変化を感じ取れず、気づいたときには取り残されている。変化を拒むというより、そもそも変化を“認識していない”のです[2]。
なぜ「変化を起こす人」は強いのか
変化を起こす人が強いのは、環境に適応し続ける柔軟性と行動力を持っているからです。変化を待つのではなく、自らの行動で環境を変えにいく。この姿勢がある人は、失敗しても立ち上がる力を持ちます。
組織は本質的に安定を志向する生き物です。その中で変化を提案することは、しばしば摩擦を生みます。しかし、摩擦があるからこそ熱が生まれ、熱があるからこそ新しいエネルギーが生まれる。変化を起こす人は、その熱源になれる存在です。
私たちはどの位置にいるのか
この4分類を自分に当てはめてみると、思いのほかドキッとするものです。新しいプロジェクトの提案をためらったり、変化に不安を感じたりする瞬間は誰にでもあります。大切なのは、「今どのポジションにいるか」を自覚し、「どこを目指すか」を決めることです。
変化を起こす人は、特別な才能を持っているわけではありません。ただ、“気づいたことを見過ごさない”という、ごくシンプルな習慣を持っているだけなのです。
まとめ──変化を選ぶ勇気を
企業も個人も、変化を避けることはできません。むしろ、変化をどう捉え、どう動くかが、これからの時代の成否を分けます。自分がどの「人種」に属しているのかを問い直しながら、小さくても「自分発の変化」を起こしていく。そこからすべてが始まるのだと思います。
引用文献
[1] ルー・ガースナー「巨象も踊る」 東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/478594?page=2
[2] 働き方改革ブログ「企業変革における4つの人種」 HATA WEB https://hata-web.com/blog/29591/

