学生時代の恩師の一言

大学時代、就職活動を前にしていた頃に、恩師からこんな言葉をもらったことがある。
「給料は切片で見ずに傾きで見なさい」
当時は半分冗談のように受け止めていたが、社会人になって5年ほどたち、ようやくその意味が実感できるようになった。切片とは初任給のこと。つまり「最初にどれだけもらえるか」だけで判断するな、ということ。そして傾きとは、経験や年齢を重ねたときに給料がどう伸びていくか。グラフにすれば、右肩上がりになるかどうかが重要だという教えだった。
初任給の見栄えに惑わされない
学生時代、就職情報誌や合同説明会では「初任給◯万円」と大きく掲げられることが多かった。20歳そこそこで、まだ世の中の物価感覚も曖昧な頃には、単純にその額の大小に目がいってしまう。だが、初任給が高いからといって長期的に伸びていくとは限らない。むしろ昇給の仕組みが乏しく、数年後に他社と逆転するケースもある。
恩師はそれを見越して「傾きに注目しろ」と言ったのだと思う。初任給の差は数千円から数万円程度にすぎないが、10年、20年と積み重ねれば大きな差になる。そしてその差は、生涯賃金という視点で見ると驚くほど大きな開きになる。たとえ年間数十万円の違いであっても、40年近く積み上げれば数千万円規模の差につながる。
給料の傾きは何で決まるのか
では、その傾きは何で決まるのか。会社の昇給制度や評価制度はもちろんだが、実際には「自分のスキルがどれだけ伸びる環境か」が大きいと感じる。つまり「この会社にいれば、自分の市場価値が上がるかどうか」。業界全体の成長性や、任される仕事の質、周りの人材から受ける刺激。そうした要素が、最終的には給与カーブの傾きを形づくる。
働き方と傾きの関係
一方で「傾きが急ならいい」というわけでもない。ハードワークと引き換えに一時的に急上昇するが、燃え尽きてしまえば意味がない。人生は長距離走であり、持続可能な傾きが理想だと思う。緩やかでも右肩上がりを続けられる環境は、結局のところ安心感につながる。
今になって思うこと
社会人になって5年ほどが経ち、あのとき恩師の言葉がどれだけ本質を突いていたかを実感する。初任給を比べるよりも、どんな経験ができ、何年後にどう成長できるか。学生時代には気づきにくい視点だからこそ、あの一言が今も心に残っている。
これから就職を考える人には、ぜひ「傾きで見る」という視点を持ってほしい。そして会社選びを通じて、自分の未来のグラフをどう描くかを考えてみるといいと思う。

