外食産業において、企業理念は単なるスローガンではなく、ブランドの根幹を成す重要な要素だ。
寿司ざんまいとラーメン二郎は、それぞれ独自の企業理念や社訓を掲げ、顧客との信頼関係を築いてきた。
本記事では、両社の理念とその実践を通じて、外食における「理念経営」の意義について考察したい。
寿司ざんまい:地域社会への貢献を掲げる理念と実践


寿司ざんまいを展開する株式会社喜代村では、「おいしい食の提供を通じ豊かな地域社会づくりに貢献する」という企業理念を掲げている。
この理念は各店舗にも掲示され、従業員が常に意識する存在となっている。
実際、24時間営業やマグロの初競りなど、ユニークで継続的なチャレンジを通じて、「地域の活性化」「食の楽しみの提供」に尽力してきた。
創業者・木村清氏の「明るく、楽しく、元気よく」という考えは、店舗全体の空気やスタッフの振る舞いにも色濃く反映されている。
ラーメン二郎:社訓に込めた“食”と“人生”の哲学
ラーメン二郎の三田本店には、ユニークな社訓が掲げられている。

「味の乱れは心の乱れ、心の乱れは家庭の乱れ…」というフレーズをはじめとし、「清く正しく美しく」や「ごめんなさい、ひとこと言えるその勇気」といった言葉が並ぶ。
この一連の言葉は、ただのジョークのようでありながら、店の運営方針や哲学がにじむものでもある。
このような価値観が券売機横に掲げられ、スタッフのみならず来店客の間でも広く知られている点は興味深い。
そこには、「味を提供するだけでなく、生き方を共有する」という、ラーメン店とは思えぬ深みを感じさせる。
店舗に掲げられる理念の力
寿司ざんまいもラーメン二郎も、それぞれの理念を「店舗に掲示」するという共通点がある。
これにより、理念はただの建前ではなく、現場で毎日目にする「行動の基準」として定着している。
飲食業においては、忙しさや業務に追われがちな環境下で、理念が風化しやすいという課題もあるが、こうした視覚的な定着の仕方には学ぶべき点が多い。
また、顧客もそれを自然と目にし、共感することで店舗に対する愛着が深まる。理念が「接客や味」の向こう側にあるブランドストーリーを感じさせるきっかけにもなる。
まとめ:理念はブレない店づくりの羅針盤
外食産業における企業理念は、スタッフのモチベーション維持や行動の統一だけでなく、顧客との心理的なつながりにも直結している。
寿司ざんまいとラーメン二郎は、理念を「掲げるだけ」でなく、「伝え、体現し続ける」ことでブランドの独自性と信頼を築いてきた。
これからの飲食ビジネスにおいて、企業理念はますます重要な意味を持つ。
味、サービス、雰囲気を超えた「何のためにこの店があるのか」を言葉で示し、それを愚直に実践することこそが、選ばれ続ける店をつくる鍵となる。