現代社会において、私たちは日々膨大な情報に触れながら生きています。しかし、ビジネスの現場でも、日常生活においても、「これが絶対の真実だ」と信じ込むことは非常に危険です。なぜなら、絶対的な真実は存在しないからです。

権威のある情報も「ひとつの視点」に過ぎない
メディア、ジャーナリスト、学者——彼らは事実に基づいて情報を発信しています。しかし、それはあくまで「事実に近い情報」であり、「唯一無二の真実」ではありません。どんなに客観的に見える情報であっても、発信者の視点、価値観、そして限られた情報ソースによって形作られています。
例えば、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ガザ戦争に関する報道を見ればわかるように、どの立場から見るかによって「事実」は異なるのです。ウクライナ側の視点、ロシア側の視点、イスラエルの視点、ガザ地区の視点——それぞれが異なる「事実」を持ち、それが並行して存在しているのです。
「唯一の正解」を求めることの危険性
特に、学校の成績が良かった人や論理的思考を重視する人ほど、「唯一の正解」があると思い込みがちです。なぜなら、学校教育では「正解を求める思考」が奨励されてきたからです。試験では「唯一の正しい答え」を見つけなければ点数がもらえません。その結果、「正解が1つしかない」という思考習慣が身についてしまいます。
しかし、ビジネスの世界では、この思考法は通用しません。市場の変化、顧客のニーズ、競合の戦略——どれも固定的なものではなく、常に流動的で複数の解釈が存在します。だからこそ、「自分が持っている情報がすべてではない」と認識し、多様な視点を持つことが必要なのです。
意見と事実を区別する重要性
意見と事実を異なる概念として理解する必要があります。3人いれば3つの意見がある——それで良いのだと僕は思っています。でも、概して日本人は意見の食い違いが苦手です。「それは違う」「あんたは間違っている」と、議論を通り越して喧嘩になりがちです。それは「意見」を「真実」と履き違えているから起きる現象です。世の中にはたった1つの「事実」しか存在しないと、正解主義の日本人は考えがちなのです。
しかし、事実とは異なり、意見には多様性があります。そして、その多様な意見のぶつかり合いこそが、より良い意思決定やイノベーションを生む原動力となるのです。
VUCA時代に求められる「多視点思考」
近年、「VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)」という言葉がビジネスの世界で頻繁に使われるようになりました。これは、「変動性・不確実性・複雑性・曖昧性」が高まる時代において、従来の固定的な思考では対応できないことを意味します。

この時代を生き抜くために必要なのは、**「多視点思考」**です。つまり、「異なる立場の人々がどのように考えているか」を理解し、柔軟に情報を取り入れる力です。以下のような姿勢が求められます。
- 自分の意見に固執しない —— 他者の意見や新しい情報を受け入れる柔軟性を持つ。
- 情報源を多様化する —— ひとつのメディアだけでなく、複数のソースから情報を得る。
- 「何が正しいか」ではなく「どう考えられるか」を意識する —— 物事に対して単一の答えを求めるのではなく、多様な可能性を検討する。
絶対視せず、常に問い続ける
ビジネスの世界では、変化し続ける環境の中で意思決定をしなければなりません。その際に、「この情報は本当に正しいのか?」と自問し、異なる角度から検証する姿勢が成功を左右します。
「絶対的な真実はない」という考え方は、一見すると不安定に思えるかもしれません。しかし、それを理解し、多角的な視点を持つことこそが、現代のビジネスパーソンに求められる最も重要なスキルなのです。
これからの時代を生き抜くために、ぜひ「多視点思考」を意識し、柔軟なマインドを持ち続けましょう。